AI時代のグローバル人材育成――5人の専門家が語る、日本企業が強化すべき“真のグローバルスキル”
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昨今、多くの企業においてAIツールの活用が急速に進み、業務の進め方や求められるスキルにも大きな変化が生まれています。英語によるメール作成や資料作成、情報収集といった領域では、すでにAIが業務を支える存在となっています。
こうした状況の中で、企業の人材育成に関わる方々からは、「グローバル人材育成の軸をどこに置くべきなのか」「これからも英語研修は必要なのか」といった声が多く聞かれるようになりました。
本コラムでは、グローバル・コミュニケーションおよびリーダー育成の現場で長年活動してきた5名の講師に、AI時代におけるビジネス英語学習の位置づけと、日本企業・日本のビジネスパーソンが今後強化すべき人材スキルについて意見を聞いています。AIの進化を前提とした上で、企業として「何を鍛え続けるべきか」を考えるヒントとして、ぜひご覧ください。
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INDEX
「準備なき対話」にAIは追いつけない――即興力が分けるビジネスの成否

Michael Jones – タレント・ディベロップメント・マネージャー
異文化コミュニケーションとグローバルリーダーシップを専門とするインターナショナルファシリテーター。1995年から日本を拠点に、多国籍・多業界のビジネスパーソン5,000人以上の育成に携わる。
(英語での)ビジネス文書の作成など一部の分野では、「もはやビジネスライティングを学ぶ必要がない」と言えるほどAIの品質が高くなりつつあります。しかし、グローバル会議の場など、準備する時間がなく即座に返答しなければならない状況では、ビジネスパーソン自身がその場で適切に対応できる能力が依然として不可欠です。
「何をすべきか」から「どう動かすか」へ。リーダーに問われる実行力

Sapna Masih Advani – コンサルタント
インド、日本、欧米といった多様な文化圏における組織文化とマネジメントに精通。インドでの研修コンサルティング会社共同設立を含む豊富な実務経験を背景に、多国籍企業の幹部育成を担ってきた。
2026 年以降も、AI を起点としたデジタルトランスフォーメーションの波は、引き続き広がっていくでしょう。それに伴い、組織の文化的課題に対して、データに基づく示唆や解決策を素早く手に入れられるようになっています。こうした状況は、グローバル環境で働く世界中のリーダーにとって、大きな意味を持ちます。
異文化で効果的に働くための調査、分析、アクションプラン作成に長い時間を費やす時代は過ぎつつあります。現在の課題は「何をすべきか」ではなく、「それをどのように実行するか」という、より人間的で複雑な問題に移行しています。コーチングやトレーニングの場でも、リーダーたちが依然として複雑で人間特有の課題に向き合っている姿を日々目にします。 私たちが向き合うべき重要な問いは、AI が生成した異文化フレームワークを、現実世界でどのように実行するかという点です。

グローバルな環境で働く日本のリーダーは、変化の時代の今、以下を実践するとよいでしょう。
AI リテラシーを高める:
AI で何ができるのかを理解し続けること。多様なモデルやツールを恐れず試すこと。AI を活用しつつも、迷子にならないこと。
自身の文脈に当てはめる:
自分の組織や文化の背景に常に注意を払うこと。AI が提案するアイデアのすべてが自分の環境で機能するとは限らない。文脈が最重要。賢く選択を。
パーソナライズする:
自分自身の判断と直感を信じること。AI が異文化フレームワークを作るのに要するのは数分。しかし、そこに自分の経験や洞察を加えるためには、少し立ち止まり、自分の感覚と照らし合わせる必要がある。 スピードに「考える力」を合わせることが大切。本質的には、日本であろうと世界のどこであろうと、リーダーに求められる課題は変わっていません。グローバル環境で活躍するには、今でも優れた判断力、共感力(EQ)、レジリエンス が不可欠です。ツールが進化しても、リーダーシップの「心」は変わりません。
英語の先にあるもの――今後も不可欠な「グローバル視点」とは

Esarona Sapoul (Rona) – コンサルタント
ヨーロッパ、東南アジアおよび日本での実務経験を持つラーニングスペシャリスト。人材育成分野で15年以上、IT、物販、製薬をはじめとする幅広い業界でトレーニングを提供してきた。
(研修の)受講生たちはすでに、メール作成、文字起こし、オンライン会議などでAIを活用しています(それは良いことだと思います)。AIが賢くなるにつれ、第二言語を学ぶ必要性をあまり感じなくなる人も増えていくでしょう。私自身もその一人です。もし本当に自然で会話として正確なレベルに達する技術が生まれたら、日本語を流暢に話せるようになりたいというモチベーションは、おそらくなくなると思います。
とはいえ、様々な文化背景を持つ人と働くには、グローバルな視点が欠かせません。そうした視点は、できるだけ若い頃から育むことが重要です。自分たちの世界の外にあるものを理解することで、特に海外で働いたり旅行したりする場合、その価値をより深く理解できるようになります。
エリン・メイヤーの”カルチャーマップ”や、ホフステードの”文化次元論“のような考え方を、子どもたちにも理解できる形で紹介することは、とても良い第一歩になるでしょう。こうした学びは、社会に出る直前や異文化体験を始める直前まで待つべきではありません

「骨の折れる対話」こそが信頼を生む

Mike Bates – コンサルタント
20年以上、日本企業およびグローバル企業で、ビジネススキル/コミュニケーションスキル研修を提供。世界最大級の外資系製薬会社で10年間、社内コミュニケーション・コーチとして勤務。MBA保持。
グローバルで活躍するためには、批判的思考力、明確で自信ある主体的なコミュニケーション力が不可欠です。シンプルで構造化されたメッセージ、積極的な発言や質問、丁寧かつ率直な意見表明が求められます。また、単なる報告ではなく洞察や示唆を提供する姿勢をはじめ、様々なコミュニケーションスタイルへの適応力、多様な視点の理解、指示待ちではなく主体性を発揮することも欠かせません。
AI によって、シャドーイングや要約、プレゼン練習、ロールプレイを継続的に行い、即時フィードバックを得られるようになりました。そのおかげで、英語学習は大きく加速しています。ただし、過度に依存しないことも重要です。AI は強力な練習相手で生産性の向上にも役立ちますが、難しい対話を管理したり、信頼関係を構築したり、異文化の力学を読み解くことはできません。
今後 AI がさらに進化し、職場を形づくっていく中、私たちが日本のプロフェッショナルに提供すべきなのは、戦略的コミュニケーション、批判的思考、リーダーシッププレゼンス、文化的共感力 といった本質的なスキルです。
また、AI が文法チェック、語彙サポート、メール作成、スライド作成といったタスクを担うことで、言語の壁は徐々に低くなっています。その結果、ビジネス英語研修の焦点は、明確で構造化された思考 と インパクトのあるメッセージ発信 へと移りつつあります。
しかし、だからといって日本のビジネスパーソンが英語学習をやめてよいわけではありません。AI を効果的に使うには、アウトプットの質――トーン、正確性、論理、適切さ――を見抜く力が必要です。AI が生成したメールやスライドは、しっかり見直し、構成や語彙を分析し、今後使える表現を吸収する必要があります。
AIは、私たちを代替するわけではない。学習を加速させる最良のパートナー

Anthony Carver – コンサルタント
英国ロンドンでのテレビ・ラジオ制作経験を背景に、25年以上にわたり研修・コーチングを提供。日本国内の企業・組織・大学を含む150以上のクライアントを支援してきた。
AI は素晴らしい学習パートナーです。確かに、特に初級レベルの学習者に対しては、英語教育の一部を置き換えるでしょう。しかし同時に、AI のおかげで多くの人が学習をゼロコストで始められるようになっています。 私たち講師の役割はなくなるのではなく、より高付加価値のガイダンス、コーチング、個別サポートへと移行していくでしょう。
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お勧めのAI活用法
①相手の懐に入るための「質問力」を鍛える(Anthony)
多くの日本のビジネスパーソンが難しさを訴えるのが、「グローバルの相手と深い関係性を構築すること」です。フォーマルな場でもインフォーマルな場でも同じです。 そのために役立つ実践スキルの一つが 質問力 です。良い質問は、信頼を作り、好奇心を示し、会話を深める大きな力となります。
AI を英語学習に活用する方法としては、究極のカスタム英語教材として扱うことが挙げられます。
例えば、顧客向けプレゼンがあるなら:
・使えるフレーズを20個考えてもらう
・顧客から聞かれそうな質問を20個考えてもらう
・自分の業界や必要なスキルに合った読解・リスニング教材を作ってもらう
といった方法が極めて効果的です。
② 学習と意思決定を支える「アドバイス/リサーチ」活用(Michael)
私は、AIは主に「アドバイス」と「リサーチ」という2つの分野で非常に有用だと考えています。
アドバイスの面では、ビジネス英語学習に関する非常に実践的なヒントを提供してくれます。例えば、「アドバイス」の観点だと以下のような質問ができます。
・「初級レベルの学習者向けにビジネス英語の独学プランを作成して」
・「グローバルリーダーになるために自分が伸ばすべき分野は何か。またどのように能力開発すべきか教えて。」
「リサーチ」の面では、あまり詳しくない分野の情報を、素早く集めるのに非常に役立ちます。例えば、ベトナム出張の前に以下をAIツールに調べさせれば、出張準備に大いに役立ちます。
・「ベトナムにおける文化的なマナーを教えて」
・「ベトナムで、やるべき/やるべきでないマナーを、①生活全般 ②ビジネスシーン、それぞれ教えて」③グローバル現場に備える「多様な発音」トレーニング(Rona)
AIは、アメリカ英語やイギリス英語だけに限られません。たとえばインド英語のアクセントを練習したい場合でも、テキスト読み上げ(Text-to-Speech)のAIモデルを活用することができます。
コミュニケーション方法を見直す、お勧めの本
この本は、25年前に書かれていますが、今こそ読むべき一冊です。自分自身のため、そして自分が率いるチームのために「考える環境」をどのように作るかを教えてくれます。
注意散漫になりやすく、複雑さとチャンスが同時に増している現代において、この考え方は、ゲームチェンジャーとなる能力だと思います。Anthony
とても読みやすく、仕事でも家庭でも、私たちは常にもっと良いコミュニケーションができるということを思い出させてくれる一冊です。 Rona
優れたコミュニケーターになるための、興味深い研究と実践的なアドバイスが数多く紹介されています。Michael
私からは以下の3冊をお勧めします。Mike
終わりに
5名のエキスパートが共通して語ったのは、AIは私たちのコミュニケーションを劇的に効率化する一方で、「意志決定」と「信頼構築」というビジネスの核心部分は、依然として人間に委ねられているという事実です。
異文化間の微妙な力学を読み解くこと、タフな交渉で相手の心に触れること、そして即座の判断が求められる会議で自らの声を届けること。これらはAIには代替できない、プロフェッショナルとしての「真価」が問われる場面です。
AIツールの進化により、単なる「作業」としての言語の壁は低くなりました。だからこそ、今、日本のビジネスパーソンに求められているのは、AIが出力した情報を自らの文脈で判断し、血の通ったメッセージへと昇華する「高度な人間力」と言えます。
キャニングでは、全世界20万人以上の支援実績に基づき、AI時代の波を乗りこなし、世界を舞台にリードするリーダーの育成を支援しています。本記事に登場した講師陣が登壇する、グローバル人材育成の研修プログラム詳細は以下よりご覧いただけます。
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