グローバル人材とは?求められるスキルや育成の流れ、育成方法を解説
2024.03.12
グローバル人材とは、語学力などを活かしながら海外でビジネスを行える、またはグローバルプロジェクトに貢献できる人材です。定義やスキル、育成の流れなどを解説します。
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グローバル人材とは?求められるスキルや育成の流れ、育成方法を解説
現代のビジネスシーンは、国境を越えての取引や協働が一般的となっています。そんな中、およそ10年前から注目されているのが「グローバル人材」です。グローバル人材とは、具体的にどのような人材を指すのでしょうか?そして、なぜグローバル人材がこれほどまでに重要視されているのでしょうか。
この記事では、グローバル人材の定義と求められるスキルのほか、育成の流れと育成方法について解説します。
語学力などのスキルを駆使し、国内外で活躍できるグローバル人材
グローバル人材とは、日本国内や国際的な舞台での活動において、母国語以外の言語に精通し、異文化を理解して、多様な価値観や背景を持つ人々とコミュニケーションを図りつつ協働しながら、ビジネスなどを進めることができる人材を指します。
とはいえ、グローバル人材についての世界基準や国における厳密な定義はなく、日本国内でも各機関において定義が異なります。まずは、主な機関のグローバル人材の定義についてご紹介します。
文部科学省の定義
日本の教育行政を司る文部科学省によれば、グローバル人材は下記の3要素を持つものとされています。
<文部科学省の定義するグローバル人材の要素>
- 語学力・コミュニケーション能力
- 主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感
- 異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティ
出典:文部科学省「グローバル人材の育成について」(2012年2月)
これに加え、幅広い教養と深い専門性、課題発見・解決能力、チームワークと異質な者の集団をまとめるリーダーシップ、公共性・倫理観、メディア・リテラシーなどを有する人材が、文部科学省が定義するグローバル人材です。
総務省の定義
各府省の政策評価の点検などを行う総務省では、2017年7月に公表した「グローバル人材育成の推進に関する政策評価」において、グローバル人材を下記のように定義しています。
<総務省の定義するグローバル人材>
日本人としてのアイデンティティや日本の文化に対する深い理解を前提として、豊かな語学力・コミュニケーション能力、主体性・積極性、異文化理解の精神等を身に付けて様々な分野で活躍できる人材
出典:総務省「グローバル人材育成の推進に関する政策評価」(2017年7月)
グローバル人材育成推進会議の定義
グローバル人材育成推進会議は、文部科学省主催の産学官連携の会議で、その後内閣府に移管されました。この会議では、グローバル人材について下記のように定義しています。
<グローバル人材育成推進会議の定義するグローバル人材>
世界的な競争と共生が進む現代社会において、日本人としてのアイデンティティを持ちながら、広い視野に立って培われる教養と専門性、異なる言語、文化、価値を乗り越えて関係を構築するためのコミュニケーション能力と協調性、新しい価値を創造する能力、次世代までも視野に入れた社会貢献の意識などを持った人間
出典:文部科学省「産学官によるグローバル人材の育成のための戦略」(2011年4月)
日本経済団体連合会の定義
日本の代表的な企業や業界団体などから構成される一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)も、2011年6月に「グローバル人材の育成に向けた提言」を公表しています。この提言の中で、グローバル人材は下記のように定義されています。
<経団連の定義するグローバル人材>
日本企業の事業活動のグローバル化を担い、グローバルビジネスで活躍する(本社の)日本人及び外国人人材
出典:経団連「グローバル人材の育成に向けた提言」(2011年6月)
なお、この提言の中で、産業界がグローバル人材のミドル・マネジメント層に求めている素質・能力は、下記のとおりです。
<経団連がグローバル人材のミドル・マネジメント層に求める素質・能力>
- 社会人としての基礎的な能力(主体性、実行力、コミュニケーション能力、協調性、論理的思考能力、職業意識、リベラルアーツの知識など)
- 既成概念に捉われないチャレンジ精神
- 外国語によるコミュニケーション能力
- 異文化に対する興味、関心、適応力
- グローバルビジネス・スキル
- 海外勤務経験
- 当該職種で必要な専門知識
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グローバル人材に求められる力
グローバル人材には、どのような力が求められているのでしょうか。ここでは、グローバル人材に求められる力について具体的にご紹介します。
語学力
語学力は、特定の言語における会話能力のことです。国際的なビジネスシーンにおいては、基本的には英語力が求められます。
英語でのビジネスミーティングでも、アメリカやイギリスのような英語圏や、シンガポールや香港などのアジアの英語圏、さらに非英語圏など、国や地域によって求められる英語力が異なります。また、英語のニュアンスや表現もさまざまです。
グローバル人材は、このような状況においても、柔軟に対応できる英語の語彙力と文法力を備えておく必要があるでしょう。
コミュニケーション力
グローバル人材にとって不可欠なのが、異なる文化背景を持つ人々との円滑なコミュニケーション力でしょう。はっきりと意見を主張する力だけでなく、相手の話を聞き取る力や、ビジネス上の落とし所を探れる交渉力も必要です。
また、理想とされるコミュニケーションも、文化的な違いによって変わります。例として、アジア圏のビジネススタイルは間接的な表現や態度を好み、直接的な表現をよしとする欧米圏の文化とは異なるので注意が必要です。さらには、欧米圏でもその度合いは文化によって異なります。
こうした文化的な違いを理解しながら、相手の立場や背景に配慮しつつ、適切なコミュニケーションを図ることが、グローバル人材のビジネス成功のためのファクターといえます。
主体性・積極性
グローバルビジネスにおいては、新しいマーケットへの進出やプロジェクト立ち上げの際、具体的なロードマップが存在しない場面も多く見られます。このような状況でも、みずから前に出てリーダーシップをとったり、提案を行ったりする主体性と積極性は、グローバル人材に求められるスキルといえるでしょう。
ただし、主体性や積極性を発揮するには、その事柄に対する十分な知識や認識がなければなりません。また、状況に応じて適切な判断ができたり、行動したりすることも求められます。
チャレンジ精神
グローバル人材には、未知のことにも果敢にチャレンジする精神が求められます。
これまでのビジネスの枠を超えて、新しいマーケットの開拓や新製品の開発を行うには、多くの困難やリスクが伴うものです。それを恐れず、リスクや失敗も乗り越えていく人材にこそ、大きなビジネスチャンスをつかむことができる権利があるのです。
リーダーシップ
リーダーシップを発揮するグローバル人材は、「グローバル・リーダー」ともいわれます。グローバル・リーダーには、国内でのリーダーシップと異なり、多様な価値観や文化、バックグラウンドを持つメンバーをまとめ上げる力が必要です。メンバーを尊重しながら、チーム全体をひとつのベクトルへ導く能力が求められます。
また、タフなスケジュールをこなすための自己管理能力や、失敗してもへこたれないレジリエンス(回復力)もグローバル・リーダーには必要とされるでしょう。
日本人としてのアイデンティティ
グローバル人材は、日本独自の文化や価値観を理解し、それを国際的な舞台で活かすことも重要な要素です。グローバルビジネスにおいては、日本のビジネスや文化に興味・関心を持ったり、理解を示したりする人に対して、日本人の代表として日本の国の文化や魅力などを、自信を持って語れなければなりません。
日本独自の強みを活かしたビジネスモデルが海外で評価されている場合もあるので、グローバル人材は日本を愛し、日本人であることのアイデンティティを積極的に武器とすべきでしょう。
異文化理解力
異文化理解とは、相手の思想や価値観との違いを知り、その上で関係を築くために違いを尊重し、受け入れること。グローバル人材には、その異文化理解力が不可欠です。
異文化理解は決して容易ではなく、特に思想や価値観の違いは摩擦を生むことも多々あります。相手を否定せず、尊重して受け入れること、そして相手にも受け入れてもらうことが異文化理解力であり、グローバルビジネスを成功させるための重要な要素といえるでしょう。
協調性・柔軟性
異文化を持つチームメンバーとの協働においてパフォーマンスを発揮するには、協調性と柔軟性が不可欠です。海外の駐在先や赴任先で働くにあたって、現地の従業員や取引先の多様な価値観・意見は交錯するものです。その中で、いかに共通のベクトルに向かって意見をまとめられるかがビジネスの成果を左右することは、往々にしてあります。
責任感
ビジネスは、さまざまなステークホルダーと関わります。その関わりは、グローバルな取引であれば、さらに複雑に絡み合っています。場合によっては、納期遅延や品質保証の問題が、国際的なスキャンダルにつながることもあるでしょう。そうならないためにも重要視されるのが、グローバル人材としての責任感です。
日本のビジネスパーソンとしての責任ある行動は、所属する企業のブランドや評価、今後の取引を守るためにも不可欠です。反対にいえば、責任感と使命感にもとづいた適切な行動は、国際的にも高い評価を受けるはずです。
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グローバル人材育成の流れ
グローバル人材を育成するには、一朝一夕というわけにはいかず、さまざまなステップを踏む必要があります。ここではグローバル人材育成の流れについてご紹介します。
1. 候補となる人材のリストアップ、課題抽出
グローバル人材育成の第一歩は、社内における適切な候補者のリストアップと、その課題抽出です。人事部門や部署ごとの評価をベースに、将来のグローバル・リーダーとして可能性のある人材をピックアップします。
このステップでの課題抽出は、次段階での育成プログラムの設計に必要となるため、細心の注意を払うことが求められます。
2. 自社におけるグローバル人材の要件定義
グローバル人材の定義は、前述のようにさまざまです。特に企業や組織単位で見れば、グローバル人材に求めるスキルはさらに変わってくるでしょう。
ですから、自社のビジネスモデルや将来像に合わせて、グローバル人材にどのようなスキルや資質を求めるのか、明確に要件定義することが重要です。例えば、アジア地域でのビジネス展開を考えている企業は、アジア文化の理解や、現地の言葉を話すスキルをグローバル人材の要件に盛り込むことなどが考えられます。
3. グローバル人材育成プログラムの設計
自社なりのグローバル人材の要件定義をもとに、具体的なグローバル人材育成プログラムを設計します。この段階では、外部でグローバル人材育成を専門に行う会社や大学との連携、ビジネススクールや海外の研修期間への留学、もしくはオンライン研修など、さまざまな方法を検討する必要があります。
グローバル人材育成プログラムの内容は多岐にわたりますが、ビジネス英語研修や異文化コミュニケーション研修、ビジネスコミュケーションスキル研修などが組み込まれるケースが一般的です。
4. グローバル人材育成プログラムにもとづく研修の実施とPDCA
設計されたグローバル人材育成プログラムに従い、ビジネス英語研修などを実施します。この研修実施とともに逐次評価を行い、次回以降の研修内容の改善に活かすPDCAサイクルを回すことが重要です。
5. 配属
ビジネス英語研修などを終えたグローバル人材は、海外の拠点など適切な部門やプロジェクトに配属されます。この研修を経て、学んだ知識やスキルを実際のビジネスの場で活かすことが期待されます。
グローバル人材の育成方法
グローバル人材を育成するには、大きく分けて2つの方法があります。最後に、グローバル人材の育成方法についてご紹介します。
社内OJT
社内OJT(On the Job Training)とは、実際の業務の中で新しい知識やスキルを習得する社内研修のことを指します。
グローバル人材の育成においては、国際的なプロジェクトに参加させたり、海外拠点で実際に業務に携わらせたりすることで、グローバルビジネスの経験を積ませる方法が一般的です。
社内OJTのメリットは、リアルな業務を通じ、即時的にスキルを習得できる点にあります。海外の取引先との交渉を通じて、異文化間のコミュニケーション力や、それに必要な語学力を養うことができるでしょう。一方で、体系的な研修を行うのが難しかったり、指導側のスキルにばらつきが出てしまったりすることもあるので、注意が必要です。
外部のグローバル人材育成研修会社などによる研修
外部の研修会社などが提供するグローバル人材育成研修は、一定のカリキュラムにもとづき、専門的な指導を受けられるのが最大のメリットです。一定の研修コストはかかるものの、プロの視点による専門知識やスキルを習得できます。
具体的には、海外のビジネス習慣や文化、国際的なコミュニケーションスキルなど、専門的な知識を身に付けることができます。具体例としては、欧米やアジア諸国とのビジネスにカスタマイズされた研修や、異文化理解のスキルアップを目的とした専門的研修などが受講可能です。
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グローバル人材とは、国境を越え、異なる文化や価値観を持つ人々とともにビジネスをする人材です。語学力をはじめとするさまざまなスキルが求められますが、グローバル人材は、今後のビジネスシーンにおいて、いっそう必要とされるはずです。
ただし、実際のグローバル人材育成やグローバル・リーダー育成は、決して容易ではありません。育成には、専門的な知識やノウハウが必要となります。
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